聖職者もうつ病になる?その原因は?

日本ではあまり認知されていませんが、僧侶や牧師といった聖職者でもうつ病になることは珍しいことではなく、しばしば問題となります。なぜ聖職者がうつ病になるのかについて、この記事では考えてみます。

そもそもの誤解

僧侶や牧師といった聖職者がうつ病になることは珍しいことではないのですが、あまり注目されることはないようです。労災認定など、具体的な出来事があったときにはニュースになることもあるのですが、その場合には、「僧侶なのにうつ病?」などのように、意外性を持って受け止められることが多いように思います。

おそらくですが、意外性があると感じられるのは、聖職者(宗教者)は悩んでいる人の心を癒やすのが仕事なのに癒やす側がうつ病になってしまっているとか、神仏の加護はないのか、といった感じで受け止められているからなのでしょう。

しかしながら、聖職者とはいえ人間であることに変わりはありませんし、神仏を信じているからといって身体的な変化が突如現れるなんてこともありません。神仏がいるとしても、それへの対応としての宗教は人間の営みであるので、まずはその点の誤解を解いておく必要があるように思えます。

さて、次に聖職者がうつ病になってしまう原因について考えてみましょう。

責任が大きい

聖職者は信者を癒やすのが仕事だというイメージが強いかと思いますが、それは間違ってはいません。実際、信者の精神的な問題や苦悩について聖職者は対応をします。信者からの相談には、生死に関わる相談や重い病気に関するもの、家庭内暴力などといった重いものも含まれます。そして、当然と言えば当然なのですが、聖職者は信者の悩みを真剣に聞き、共感をしていく必要があるので、その負担が大きくのしかかることになります。信者は、聖職者に言えば何とかしてくれるだろう、という期待が強いので、聖職者のプレッシャーは大きいです。

また、聖職者はその宗教組織の代表となる場合が多いです。代表ということは、その組織を運営、経営していく立場となります。信者一人ひとりを見つめながらも、組織全体としての人間関係も考え、そしてお金のやりくりなど経営的な視点も必要です。一般的に、宗教はお金を持っていると思われがちですが、それはごく一部の観光などで有名な宗教団体だけで、大部分はお金がありません。少ないお金で組織の運営を考えていかなければならず、運営を間違えれば組織全体が潰れかねないので、責任はとても大きいです。

孤独感が強い

日々、信者との交流はあるものの、聖職者はその宗教組織の代表者であり、指導者であるので、信者とは一定の距離感が生まれます。また特定の信者と仲良くするということをすると、組織運営上、他の信者との人間関係が悪くなったり、組織内に派閥が生まれてしまって組織の統一感が失われてしまうなどの問題が生じる可能性があるため避けなければなりません。そうすると、周囲に人はいるけど、自分の意見を言い出せないことになり、孤独感が強くなります。

また、一般的なイメージの通り、実際に聖職者は信者の悩みを聞く側であるというプライドのようなものが聖職者にもあり、これが邪魔をして誰かに悩みを相談するということができません。

そもそも、日本では聖職者という仕事があまりにも特殊であるため、同じ立場にある人が周囲におらず、相談するにも相談できる人がいないということもあります。

プライベートがない

聖職者の労働時間はかなり長いです。たとえば、比較的大きなお寺の僧侶であればあるあるなのですが、朝の5時くらいにお寺でお経を唱える、などといったことをします。朝の5時に始まるのですから、準備などを含めるとかなり早くに起きなければなりません。そして、通常であれば昼過ぎくらいに「仕事」は終わるのですが、そうは言っても世間ではまだ昼なので、なんだかんだでやることが出てきて、本当に終わるのは夜遅くになっていることが珍しくありません。そして、また朝早くに起きることになります。

そして、休日であっても、たいてい住まいは宗教施設の中やすぐ隣であるので、信者が訪ねてくることもあり、急な対応を求められることになります。

普通の会社などであれば、こんな働き方はありえないものですが、聖職者だからという理由になっていない理由で働かなければなりません。聖職者自身もそういうものだという意識を持っているために、労働問題に発展することは少なく、実際に発展した場合にはニュースになることもあります。そして「聖職者なのに?」と意外性を持って受け止められるわけです。疎外感も感じられるでしょう。

まとめ

他にもいろいろと原因は考えられるのですが、これだけでも聖職者がうつ病になってしまう理由はわかるのではないかと思います。聖職者とはいえ人間ですし、人間である以上、責任の重い仕事を一人で抱えて休みもなく働き続ければうつ病になるのも無理はありません。聖職者もしっかりと休むことが重要だと思われます。

ところで、私は宗教のオンラインカウンセリングを行っています。実際にうつ病などになってしまっている場合は私にはどうすることもできないのですが、日頃のストレスを発散したい、モヤモヤしているものを吐き出したいという場合にはご利用いただければと思います。

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