初学者が独学で行政書士試験に合格した勉強法

私は独学で行政書士試験(令和4年度)に234点で合格しました。行政書士試験を受けようと思うまで法律を勉強したことはありません。初学者で、しかも独学で230点を超えることはかなり珍しいそうです。そこで、私がやっていた勉強法を紹介しようと思います。

勉強時間

フルで仕事をしながら勉強していました。平日の勉強時間は約2時間。休日はだいたい6〜8時間やっていました。本格的に勉強を始めたのが5月くらいですので、半年くらい勉強していたことになります。合計の勉強時間は800時間はいっていないくらいでしょうか。ネットでは、合格に必要な勉強時間の目安として、600〜1000時間と言われることが多いらしく、私の場合もちょうど当てはまるのかなという感じです。

ちなみに、冒頭にも書きましたが、行政書士試験の勉強を始めるまで、法律の勉強はしたことがありません。まったくの初学者です。

使用した教材

スタートダッシュを除いた合格革命シリーズ一式と、LECの直前予想模試を使いました。他に教材は使っておらず、六法も合格革命の基本書に付属していたものを使いました。判例集は使っていません。

LECの直前予想模試を使ってはいますが、合格に必要な知識は合格革命シリーズで全部得たと思っています。LECのは、試験本番の一週間くらい前に急に不安になり、きちんと実力がついていることを確認するために、安心するために使ったという感じです。合格革命シリーズの知識だけで、LECの3回分の模試すべてで230点前後を取れていたので、合格革命シリーズは信頼できると思います。

しかし、裏を返せば、LECの模試で230点前後、本試験でも234点ですから、LECの教材はかなり質が高いと言えるとも思います。私は何となくで合格革命シリーズを選びましたが、LECの教材一式を使うのもいいかもしれません。それか、伊藤塾も有名ですので、その教材でもいいでしょう。

この記事を書くにあたり、他の合格体験を記したブログやYouTube動画などを見たのですが、どの教材を使うかにかなり力を入れて紹介していたように思います。しかし、結局のところ、どの教材を使うかはそれほど重要ではなく、しっかりと勉強して知識を身につけることが重要なのだと思います。公務員試験や司法書士など、似た分野の過去問も解くべきだとか、色々な意見がありますが、教材に関してはあまり複雑なことを考えなくても、各出版社が出している教材一式を揃えておけばいいかと思います。費用もだいたい1万円くらいですから、そんなにめちゃくちゃ高いものではないでしょう。

勉強方法

教材の使い方に関しては、教材の最初の方に書いてある「本書の使い方」的なページをそのまま参考にしました。つまり、合格革命シリーズに関しては、基本書と問題集を交互にやって、力がついてきたら過去問をやる、みたいな感じです。ひねくれた使い方はしていません。

しかし、私の勉強方法として、少し特殊な点があるかもしれません。それは、本を一周するのに時間をかけないことです。

たぶん、ほとんどの人は基本テキストと問題集を初めて一周するのに3ヶ月くらいかけているのではないかと思います。けっこう分厚い本ですから、それくらいかけたくなるのもわからないではありません。しかし、そのやり方だと、最後の方まで学習を進めた頃には、最初の方にやったことをほとんど忘れてしまっています。

私は一ヶ月くらいで1周しました。本当は2週間くらいで終わらせたかったのですが、仕事もあって時間がかかってしまいました。ですが、一ヶ月で1周目を終わらすのはそこそこ速い方だと思います。そして、2周目は、だいたい2週間くらいで終わらせました。1周目ですんなりと理解できたところは飛ばし、理解しにくかったところを重点的にやっていくことで一周目よりも短時間で終わらすことができます。そして3周目も同じように、2周目でわかりにくかったところを重点的にやるという形で、1週間くらいで終わらしました。これを繰り返すことで、短期間で知識を得ることができるようになります。

過去問も同じ要領でやりました。かなり問題数が多いですが、とにかくサッと1周目を終わらせる。そして、間違えたところだけを2周目にやる。2周目に間違えたところを3周目でやる、というように学習を進めていきました。

そして、学習の際に活用したのが付箋です。間違えた問題すべてに付箋を貼りました。Amazonで120枚入のポストイットを10個近く買い、間違えた問題1つ1つに貼っていきます。最初は付箋がいっぱいで大変なことになりますが、付箋を貼ることで間違えた問題が明確になり、便利です。正解したら付箋を外していくわけですが、徐々に付箋が減っていくのが目に見えてわかるので、理解が深まっていることが視覚的にもはっきりとし、成長していることが実感できていいのかなと思います。

上の画像のような形で付箋をつけまくっていました。これは当時のものではなく、今勉強している司法書士の問題集なのですが、やり方は当時とまったく同じです。前半の付箋が少なくなっているところが2周目をおえたところで、後半の付箋がいっぱいついているところは1周目で間違えたところです。2周目は1周目で付箋をつけたところだけをやっている感じですね。

ところで、勉強する範囲について、会社法は5問しか出題されないから捨ててしまおうとか、行政書士試験では6割取れたら合格できるから力を抜いて勉強してもいいとか、そういう意見をネットで見ました。しかし、教材に書いてあることはすべて理解するつもりで勉強した方がいいと思います。というのは、教材の最初の方にも書いてあると思いますが、合格に必要な情報だけを集めたものがあの教材からです。

案外忘れがちなのですが、教材に書いてあることは全部重要です。6割取れたらいいからといって、教材の6割を理解すれば合格できるわけではありません。教材の全部を理解して、ようやく試験で6割を合格できるように作られているのです。例えば、教材に憲法はあまり多くのページをさかれていませんが、本屋で憲法の本がある棚を見るとわかるように、大量の本があります。本来、それくらいの量があるものを、あの教材に詰め込んでいるのです。そう思うと、分厚い教材も薄く見えてくるのではないでしょうか。とにかく、変なことを考えずに、教材をしっかりと勉強することが大切だと思います。

勉強のコツ

行政書士試験を何度も受験される方もいらっしゃるようです。ブログ記事やYouTube動画ではあまり語られていないようなのですが、でも私は大事なことだと思いますので、批判覚悟で書きますけど、少なからず、文章を読めない人がいらっしゃるようです。

これは研究でも明らかになっているのですが、7割の人は文章を読めないそうです(新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』)。元の研究は学生を対象に調査をしたようですが、大人になっても割合はそれほど変わらないでしょう。勉強は基本的に文章を読んで行うわけですが、文章を読んで、そこから適切に意味を汲み取ることができないなら、どれだけ勉強しても(文章を読んでも)理解できない、点数に結びつかない、ということになってしまいます。また、問に対する知識を持っていたとしても、問題文を適切に読むことができず、誤った回答をしてしまうこともあるでしょう。

それでは、文章を読めないならどうすればいいのかということになるのですが、これはひたすらに訓練するしかないように私は思います。読み書きは自然的な行為ではなく、人工的な行為だからです。法律の勉強以前に、文章に触れる訓練が必要になってくるかもしれません。

正直なところ有効かどうかわからないのですが、私が文章を読む際に気をつけていることを2つ紹介したいと思います。それは、具体的なイメージを持つことと、概念の階層構造を意識することです。

具体的なイメージを持つ

具体的なイメージを持つというのはそのままの意味です。文章を読んだときに、その内容を頭の中で具体的に想像してみます。想像できるのならある程度は理解できているでしょうし、容易に想像できないようならそれはたぶん理解できていないです。

ただ、法律の用語はとっつきにくく、そもそも概念を習得するだけでもかなり時間がかかります。文章を読めていなくてイメージができないことと、概念の習得ができていなくてイメージできないことでは意味が違ってくるでしょうから、その区別をすることが大切であるように思います。

文章を読めているかどうかという意味では、一般知識の文章理解のような法律とは関係のない文章を読む際に、その内容を頭の中でイメージできるかどうかで判断するのがいいのかもしれません。

概念の階層構造を意識する

概念には階層があります。例えば、犬という概念の下には、柴犬や秋田犬、チワワなどといった概念があります。また、犬という概念の上には動物という概念を想定することができるでしょう。この犬という概念を基準とした場合の、柴犬や秋田犬といったものを下位概念といい、動物という概念を上位概念といいます。

この概念の階層構造を理解することは文章に触れる際にとても重要なことだと私は思っているのですが、法律を学ぶ際はとりわけ重要になってきます。たとえば、民法の物件には、占有権、所有権、担保物権、用益物権とあり、また担保物件には抵当権や留置権などといったものがあるというように、きれいな階層構造を持っています。これは法律全般に言えることで、この概念の階層構造を把握することで、法律の全体像が見えてきます。

何を言っているのかわからないという場合は、パソコンのフォルダを想像してみてください。あるフォルダを展開すると、その中に収納されている他のファルダやファイルが出てくるようなイメージです。

まとめ

いろいろと書きましたが、とにかく、ひねくれた考えを持たずに、教材一式を揃えて、教材に書いてある内容を全部理解することが大切です。そして、内容をしっかりと理解するために、1周するのに時間をかけず、何度も繰り返すことが大切になってくると思います。テキストを読む、問題を解いてみる、間違えたらテキストに戻って読み込み、ふたたび問題を解く、これを真面目にコツコツとやっていくしかないでしょう。

行政書士試験はやることをやっていれば合格できる試験だと私は思います。資格の中では難関だと言われますが、法律系の中ではかなり簡単です。また、初学者の方であれば特にそうだと思いますが、法律の勉強は難しいという印象を受けるのではないでしょうか。しかし、憲法や民法をちょっと見てみるとわかるように、法律は、そんなに高度なことを言っているわけではありません。法律の学習は、相対性理論のような一部の人にしか理解できない複雑なことをやるわけではないので、普通に文章を読む力があるならば、誰でも理解できるものです。ただ、細かいルールが多いために習得するのに時間がかかるというだけの話です。

特に才能がなくてもやることをやっていれば合格できる試験だと思いますので、勉強は苦しいかもしれませんが、頑張ってみてください。

試験についてよくある疑問

最後に、行政書士試験について受験生が抱きがちな疑問について簡単に答えてみたいと思います。受験生から直接に質問を受けたわけではありませんが、繰り返しになりますけど、この記事を書くにあたって他のブログ記事やYouTube動画などを見ました。またコメント欄なども見ました。そこによく出てきた受験生の疑問に、私なりに答えてみたいと思います。

一般知識はどうやって勉強すればいいですか

私は一般知識は48点だったのですが、何か特別なことはやっていません。それこそ、教材に書いてあることを勉強したくらいです。

たぶん、教材にも書いてあると思うのですが、まともに対策できるところは文章理解と情報系のところだけで、他の社会とか経済とかは過去問を見るくらいしかできないでしょう。こういう書き方をするとけっこう不安になってしまう方もいると思うのですが、試験を作る側としても、わけのわからない問題を出題して不合格者が続出する事態になるのは避けたいので、そんなに心配しなくてもいいと思います。

私のときは、令和4年度に受験したのですが、今ではちょっとしたネタになっているのでご存じの方もいると思うのですけど、ヒラリー・クリントンがアメリカ大統領になった、みたいな問題が出たほどです。試験本番では緊張して間違えた人も多かったそうですが、こういうレベルの問題も出るので、確実に取っていけば大丈夫でしょう。

記述式の採点はブラックボックスなのですか

採点の基準ははっきりしないので、ブラックボックスと言えばそうなのかもしれません。しかし、私は記述式は50点でしたが、ちゃんと点数をくれてるんだなという印象を受けました。2問完答したのですが、そのうちの1問は少し余計なことを書いたので、減点されるのを心配していたのですけど、ちゃんと20点くれました。また、間違えた問題に関しても、部分点で10点くれていました。なので、そんなに変な採点はしていないと思います。

予備校の模試はわざと難しく作られているのですか

これは最初、意味がわからなかったのですが、調べていると、予備校の利用者を増やすために、市販の模試をわざと難しく作って、不安を煽っている、という噂があるそうです。

これも実際どうなのかは知りませんが、でも、私はLECの市販の模試をやっています。点数は3回とも230点前後で、本試験でも234点でしたから、難易度はほぼ同じです。他の予備校が出している模試はやっていないので、わかりませんけど、少なくとも、LECに関しては変なことはしていないのではないでしょうか。

しかし、正直なところ、模試で点数が取れていないのならば、基礎ができていないのだと思います。変なことを考える前に、勉強に集中したほうがいいかもしれません。

行政法と民法だけで合格できますか

YouTuberが行政法と民法だけで行政書士は合格できると言っていて、驚きました。そのYouTuberは自信満々に合格できると言っていたのですが、できなくはないだろうけど、相当厳しいと思います。行政法と民法だけで合格しようと思ったら、ほぼ全問正解しないといけないことになってしまうからです。

行政法と民法をほぼ全問正解レベルにまで持っていくなら、かなり網羅的に勉強しないといけないことになりますが、そんな時間あるんだったら憲法と会社法をやっている方が楽なのではないでしょうか。

何度も言いますが、ひねくれた考えを持たずに、教材一式を揃えて、教材に書いてあることをしっかりと理解すれば行政書士試験は合格できます。

行政書士試験の難易度は上がりすぎではないですか

試験の難易度が上がってきているのは間違いないと思います。私も行政書士に登録して先輩と話していたとき、昔の試験は本当に簡単だったと仰ってました。

しかし、試験一般として見ると難関資格でしょうけども、法律系の資格の中では簡単だと思います。今、私は司法書士の勉強をしているのですが、振り返ると行政書士は簡単だったと感じます。これは、行政書士と司法書士では、司法書士の方が民法のレベルが高いとかそういうのではありません。同じ民法ですし、内容はそんなに変わらないのですけど、試験範囲が行政書士の場合は少ないのです。なので、かなり勉強しやすいと思います。

ついでに言うと、実際に行政書士として働くのであれば、法律を運用していくわけですが、行政書士試験だけの知識ではかなり心もとないと感じます。ここ最近は相続関係が人気ですが、行政書士試験の知識だけで相続業務をするのははっきり言って無理です。その意味では、資格取得だけを目的としている場合なら大丈夫ですが、行政書士で仕事をするつもりなら割と本気出して勉強しないと将来大変なことになるかもしれません。試験勉強中に法律に慣れておいたほうがいいと思います。

受験料高すぎませんか

高いと思います。ですが、決まっていることなので仕方がないですね。どうやら試験センターもお金に苦労しているらしいです。

ところで、試験とは関係ありませんが、お金についてです。もし将来独立を考えているのであれば、かなりお金がかかるので気をつけてください。行政書士会に登録しないと行政書士として仕事ができないのですが、登録するだけで30万円前後かかります。加えて、事務所を借りるのであれば家賃がかかりますし、パソコンやプリンター、電話、FAX(この時代にって感じもしますが、あったほうがいいです)などなど、揃えるべきものがたくさんあります。そうすると、開業だけで100万円くらいしますし、また開業してすぐに仕事が安定することはまずないですから、生活費も念のために2〜3年分くらいはあった方がいいです。

何が言いたいかというと、とにかくお金がかかるので、もし受験料だけでかなり厳しいようなら将来はもっと厳しいことになるので、計画的に動いたほうがいいと思います。