心理カウンセリングと宗教カウンセリングの違いとは?

カウンセリングと宗教の違いについて疑問に思われる方がしばしばいらっしゃるので、この違いを簡単に解説してみます。

なお、「宗教」と言ってしまうとかなり広い意味になってしまうので、牧師や僧侶といった宗教者が行うカウンセリングのことを、ここでは便宜上、宗教カウンセリングと呼ぶことにします。

心理カウンセリングと宗教カウンセリング

心理カウンセリングとは、臨床心理士や公認心理師など、心理学に基づいたカウンセリングのことを言います。一般的に、単にカウンセリングと言った場合には、心理学に基づいたカウンセリングを指していると思われます。

次に宗教カウンセリングですが、こちらは特定の宗教の信仰や世界観に基づいて、カウンセリングを行います。たとえば、牧師が行うものであれば、キリスト教思想に基づいて対応することになりますし、僧侶であれば仏教思想に基づいて対応することになります。

宗教相談への対応の違い

心理カウンセリングと宗教カウンセリングの違いは、宗教に関連する相談への対応の違いで考えるとわかりやすいです。

たとえば、キリスト教を信じている人が教会での人間関係に悩んでいると相談に来たとします。

この場合、心理カウンセリングでは、クライエントがキリスト教を信じていることを尊重し、教会という場所の特殊性を考慮しながらも、人間関係について心理学に基づいてカウンセリングを進めていきます。このとき、キリスト教の教義ではどのようになっているのかといった話はカウンセラーはしません。クライエントからそのような話が出た場合には、クライエントはそれを正しいと考えているという事実を踏まえながら、心理学的に何ができるかを考えていきます。

これに対して宗教カウンセリングでは、信仰を前提として考えるので、キリスト教において教会がどういう場であるのかとか、神と人間の関係について教えたりとか、あるいは聖書を引用してアドバイスをするなどといったことになります。

かなり乱暴に言ってしまうと、心理カウンセリングでは心理学という科学に基づいたカウンセリングで、宗教カウンセリングは宗教、信仰に基づいたカウンセリングと言えるでしょう。

このことを念頭においておくと、心理カウンセリングと宗教カウンセリングの違いやできることできないことの違いがよくわかると思います。その違いについて、代表的なものをさらに詳しく見ていきましょう。

説明できる範囲が違う

これは繰り返しになるのですが、心理カウンセリングは科学的にアプローチするのに対して、宗教カウンセリングは宗教的にアプローチするので、対応できる範囲が異なってきます。

例えば、大切な人に雷が落ちたとします。この場合、心理カウンセリングでは、なぜ大切な人に雷が落ちたのかについて説明できず、大切な人に雷が落ちてしまったことへの悲しみに対してどう向き合っていくかを考えることになります。

宗教カウンセリングでは、大切な人に雷が落ちてしまった理由を、宗教的な世界観に基づいて説明することができます。たとえば、罰が当たったなどのようにです(これで納得できるかはともかくとして)。

カウンセリングの対象が違う

心理カウンセリングの対象は、カウンセリングを希望してきたその人です。つまり、生きている人がカウンセリングの対象です。

これに対して宗教カウンセリングでは、カウンセリングを希望してきた人、つまり生きている人はもちろんのこと、その場にいない人や死者も対象となります。その場にいない人に対して、祈祷や祈りを捧げたり、死者を供養したりします。

場所が違う

心理カウンセリングと宗教カウンセリングでは、カウンセリングを行う場所が異なります。

心理カウンセリングでは、基本的には公共の場で行われます。具体的には、病院などの医療機関や老人ホームなどの福祉施設、それに学校などの教育の場などがあります。

これに対して、宗教カウンセリングでは、基本的には教会やお寺などの宗教施設か、信者の自宅などの個人的な場で行われます。

環境の違いはカウンセリングの在り方にも影響を与えるでしょう。

カウンセラーの服装が違う

心理カウンセリングでは、カウンセラーは私服やスーツを着るのが一般的だと思われます。

これに対して宗教カウンセリングでは、カウンセラーは宗教的な服を着用します。たとえば、僧侶であれば袈裟、牧師であればガウン、といったようにです。服装は宗教的な権威を示すので、実証的な研究はないようですが、カウンセリングに与える影響は少なからずあるでしょう。

ここまで踏み込んで言っていいかわかりませんが、心理カウンセリングではカウンセラーとクライエントが対等の関係にあるのに対して、宗教カウンセリングでは聖職者と一般信徒という上下関係が意識されるのではないかと思います。

他機関との連携の有無

心理カウンセリングでは、カウンセリングだけでは問題解決が難しいと思われる場合には、提携する他機関と連携を取ります。たとえば、カウンセリングが難しいほどにうつ病が進行しているなら医療機関を紹介しますし、家庭環境があまりにも酷いという場合には行政機関に対応を求めることもあるでしょう。

これに対して、宗教カウンセリングの場合は、基本的には宗教的な問題として完結するので、他機関との連携はしていません。中にはしているところもあるでしょうが、あまり数は多くないだろうと思われます。

まとめ

ざっくりとですが、心理カウンセリングと宗教カウンセリングの違いについて説明してきました。どちらも優劣があるとかではなく、アプローチの仕方が異なるので、それぞれメリット・デメリットがあるのかなと思います。

ちなみに、私も宗教専門のカウンセリングをしているのですが、私の場合は、心理カウンセリングの方になります。宗教について話したいという方は利用してみてください。